「愚かだと、愚作だとは思わないか？」

「圧倒的力を前にしてなぜ邪魔をする？」

「なぜそのような目で俺を見ている？」

「アレがいる限り俺がいて、お前たちがいると？」

「なるほど、確かにそれは一理ある」

「何より生物……いや、特にお前たちのように言葉を使い、発し、思考し、共感する生物だからこそ」

"お前たちが作り出した感情というものは恐ろしいな"

「それは神々にはなかったはずだが」

「まぁそれは良い、成長というものはどちらに転んでも美しいからな」

「ところでどうだ、やり合う前に1つ俺との会話を楽しまないか？」

「何光年と独りだったんだ、少しくらい会話相手になってくれないだろうか」

「あぁ、言わなくていい、そのままでいろ」

「俺はこの前とても興味深い話を聞いたんだ」

「それの始まりはなんだったか、」

「その世界にはでかい獣のようなものが住んでいたらしい」

「あぁ、ほとんどのやつがお前たちとは比べ物にならない大きさだろうな」

「それもお前たちとは違って、四足歩行だったり、羽が生えていたりしたそうだ」

「牙、というより歯か？それも凄かったらしいぞ」

「その世界は言わば弱肉強食だったらしくてな、弱いものは死に、強いものが生きる……なに？今もそんな感じだと？それは権力者の問題だろう」

「その世界に権力はおそらくないだろう。あるのは"力"だ」

「だがどうやら滅んだみたいだ」

「なぜ？」

「清掃だよ」

「生き物には寿命がある。それは自分でもわかっているだろう？」

「ではなぜ？お前たち人間はおおよそ100歳前後で死ぬ。」

「だが昔はどうだった？」

「なんだ、歴史が苦手か？まぁいい、話を戻すぞ」

「生き物が成長していくのをある神は眺めていたんだが、飽きたんだ。」

「どれだけ強い遺伝子を持っていても同じ成長しかしない。奴らは自分たちとかたちの違う生き物とは子を残さなかった。」

「つまり、進化が止まったんだ。もちろん神はそれを良しとはしなかった」

「そう。だから清掃。」

「とりあえずその世界にどでかい石をぶつけて滅ぼしてしまったのさ。」

「植物が育たなくなって、生き物がほとんど居なくなった世界で、次はどんな生物が作られるのか………神はそれが楽しみで仕方なかった」

「次にできた生物はお前たちとよく似ていた………というよりかはまだまだ遠いが、」

「あぁ、この発展は凄かった」

「毎日がキラキラしていてな。知識とは素晴らしいものだ。」

「だがな、ずば抜けた成長は神をもビビらせて危機感を覚えさせることとなってしまった。」

「じゃあどうしたか？」

「頭のいい生き物はある一定を超えると即座に殺されたんだよ」

「傲慢だと思うか？」

「ならこう考えてみろ。」

「今お前の足元に1匹のバッタがいるとしよう。お前は踏み潰すことが出来る。だがそのバッタはお前が踏み潰す前に小さな体でお前を1km先まで突き飛ばした。」

「怖いだろう？恐ろしいだろう？」

「バッタがお前を蹴飛ばすなど無理であろう？」

「神はいつか自分が越えられるのが怖かったんだ。」

「だから始末するしか無かった」

「こういうヤツらのことをなんて言うんだったか………」

「…あぁ、"天才"か」

「成長しろと言うのに、いきすぎると殺す…傲慢だな俺でも思った」

「だがその不安、分からなくもない」

「なに？長い？…やかましいわ。」

「だが、天才が残したものを別の時代が引き継いでいってなぁ、これは素晴らしかった」

「神が本気でキレかけていたらしいぞ？」

「だからまた、まとめて"清掃"しようとしたのさ。」

「だが滅ぶことはなかった」

「技術を重ね、文化を増やし、寿命を伸ばす。」

「神はそれを滅ぼそうと努力する」

「だが人間は、それを受け入れ、悔しさや憎しみ、悲しみを泣きながらも明日を、未来を笑顔で迎える」

「恐ろしい生き物だ」

「今でもお前たちは戦っているのだろう？」

「だが、半分は自分たちの日頃の行いのせいで滅ぼうともしている」

「さてどうする？"清掃"の時間は刻々と迫ってきている」

「滅ぶのが先か、それともそれすらも乗越えて笑うのか………」

「これが俺が見た世界の話だ」

「そこのお前、よくここまで読んでくれた」

「俺は君たちの世界に直接関与はできないが……」

「何がなんでも神は滅ぼしに来るだろう。それはお前たちが望まなくても。」

「だが、神が手を下さなくても滅びそうだな今の貴様たちの世界は。」

「だがそれも事実。お前たちは見た目が"通常"とは違うものを嫌いすぎる性質がある。…………まぁそれは神も例外では無いが」

「それは意外と普通なのかもしれない。
だが、それでも同じなことはある。」

「お前たちはどれほど見た目が違っていても、生き物であればそれは」

「"種"と"胎"から出来たということは変わらない」

「必ずお前たちを作った"生産者"がいる」

「その"生産者"にもさらに"生産者"がいる」

「辿れば獣にたどり着くかもしれないな。」

「お前たちは代わる代わる進化を続け、気持ち悪いほどの技術、知識を身につけてきた。」

「神が恐怖し、嫉妬するほどのな」

「清掃が恐ろしいか？」

「滅亡が怖いか？」

「なら足掻くしかない」

「足掻いて足掻いて、最後は笑いながら死んでしまえ」

「それが一番神に対する嫌がらせになる」


「俺の話は終わりだ。」

「言いたいことは沢山あるようだが、お前にそのような時間は無い」

「俺は神であり、お前は人。」

「ならやることはひとつだろう？」


「足掻けよ。そして笑ってみせよ。」

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