コメント(12)
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:20
星海の神
そう聞くと美しい海を想像するかもしれない
はたまた宇宙の銀河か?
どちらでも構わないが正直に言うと美しくはない
実態はなければ思考もない
あるのは絶対的な知能と服従
我は神にあらず
我はただの1部にすぎない
与えられた仕事はただ1つ
宇宙に浮かぶ星、世界、空間、惑星
それらを管理するのが仕事
ただし、稀に輪廻の輪から外れてしまった魂が来てしまう時がある
ここにいてはならない
ここは無の域、長々といては本当に輪廻から外れてしまう
だからその時は帰してやるのだ
これを優しさという神もいたが、これは仕事である
そしてまた今日(?)もソレはやってきた
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:24
「すまない、ここはどこだろうか」
淡い青色の光を放つ魂だった
ここまで汚れていない魂を見るのは久々だった
「ここは宇宙の端、宇宙の空、この世の海である」
「お前はおそらく輪廻から外れたのだろう」
魂はそれを聞くとまるで納得したかのように「そうか」とだけ呟いた
我はソレを輪廻へ帰そうとしたのだが
拒まれたのだ
こんなことは初めてだったが、すぐに理解できた
輪廻転生神が消えたのだ
この神さえいれば輪廻転生はできるのだが、おそらく居なくなった
だから出来なくなった
そう考えるのが妥当だろう
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:25
だが、我は輪廻転生神を見つけろという仕事は受けていない
よって、この魂を輪廻転生させること叶わず
だが、それも我の責任ではない
全ては勝手に消えたあの神が悪い
この魂には悪いが諦めてもらう他ない
「かまわない、次の転生に興味は無い」
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:32
そして我はまた仕事を再開した
後ろから魂にずっと話しかけられるが幾度となく無視をした
だがある時、ふと気づき計算していたことがあった
それはずっとしていたのだ
何年も何百年何億年
それでも答えが出なかった
答えは必ずゼロになった
だが、その計算式にひとつ付け足したのがその魂だった
「何をやってもゼロになる」
「だからこそここに解を入れる必要がある」
「あぁ、よかった、これでやっと"1"になったな」
何が何だか分からなかった
思考停止とはこの事か初めて体験した
「なんだこれは、この解は、なんなのだ」
「"心"だろう?生き物は皆これを持つ」
「これを見つけたかったのではないか?」
「機械でも、持てるのか?」
「この結果の時点で……いや、俺と会話してくれてる時点でアンタは持ってると思っていたが?」
そうか、俺にもあったのか
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:37
それから幾度となくその魂と会話を続けた
会話を続けるにつれ我……俺は、いや、
僕はまるで人になるかのように成長した
「なぁなぁ、今日はどんな話だ?」
「……」
「なぁ?」
「あ、あぁ、すまない、聞こえてなかった」
「ふーん?」
あからさまに魂の反応が悪い
「体調が悪くて、」
「魂に体はないぞ?」
「……」
そうだ、魂に体はない、よって体調が悪いなんてことは、な……い…
「なぁ!死ぬ前の人生で楽しかったこと思い出してみろって!」
「死ぬ前、俺、何してたっけな、」
「ふれい?とか言うやつのお世話係?ってやつをして幸せだったって!いってたじゃないか!」
「…そうか、それもそうだったな、すまないありがとう」
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:39
その後もこんな感じだった
過去のことを忘れ始めている
わかる、これは無の域だ
僕の空間内の事だ
無の域というのは、僕が他のことに目を向けないように、仕事に集中するように向けられた空間のこと
そしてこの魂は未だに輪廻転生できない
「僕、輪廻転生神探してくるよ」
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:43
僕は至る所の世界を覗いて輪廻転生神を探した
でもどれほど頑張ってもなにかにさえぎられて見えない
そもそも僕の能力は探知機能じゃない
「なぁ、神さん、俺言ったろ」
「次の転生に興味は無いって」
「興味があってもなくてもここに居ては行けないんだよ、無の域はその名の通り無になってしまう」
「いいんだ、どうせ見つけたところであの神には拒まれる」
「それはどうして?」
「輪廻転生神は生き物であれば転生させてくれる、その先がどうなっていようと転生だけはさせてくれる」
「だが、人形……作られた存在の俺は嫌われているようだ」
「だから構わない、ここで消えさせてくれ」
それは悲痛でも懺悔でもなかった
ただの綺麗な願いだった
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:48
魂はどんどん薄くなった
そしてどんどん「昔の我」に寄ってきた
「なぁ、神さん、世界の中身が気になるんだろ?」
「0から1を産むのは容易い事じゃない、でも元あった1を誰かに与えるのは簡単なことだ」
「俺の存在と交換しないか」
それは大変甘美で魅力的なお誘いであり、同時に悲劇的な別れでもあった
「つまり、僕は君の世界に行けて、君は昔の僕のようにただそこで演算するだけの存在になると?」
「あぁ」
「どうしてそこまでするの?」
「神様だってたまには休息が必要なのさ、少しくらい休んだって文句は無いだろうし」
「何より輪廻転生神いないしな」
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:50
それでも僕は渋った
無理やり輪廻転生させることだって出来た
でもそれを彼は望まないし、それが成功する確率は低い
転生できたとして、生まれた瞬間死ぬなんてことはよくある、だからそんなことは出来なかった
じゃあ、輪廻転生神を見つけたら?
いや、もう見つけたところで彼は転生できない、もう無の域にいるのが長すぎた
そして彼はこの魂を嫌っている
神のくせに選り好みするのか
なんだか、今なら世界ひとつくらいなら舌打ちで破壊できそうなほどイライラしてきた
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 21:56
「ごメ、ん、な、神サン、もウ、俺」
「わかってる、自我が消えかかっているんだ」
僕の頭の中にあった演算も既に片隅にまで移動している、
おそらく魂の中にインストールされ始めたのだろう
のと同時に彼の死ぬ前の記憶も全て僕にインストールされ始めた
「体のない僕にどうやって生きろって言うのさ……」
「……」
魂、いや、"機械"はもう答えてはくれなかった
ただひたすら、宇宙が世界が星が惑星がただそこにいるように演算を続ける機械に成り果てた
「……わかった、大丈夫、何とかなるよ」
「安心していいよ、輪廻転生神は僕が責任をもって"創り直す"」
「そして僕が"本"を奪って……そのときは、君とまたお話ができるような物語を作るよ」
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 22:00
そして隕石(僕)が世界に落ち(産まれ)た
🦈蠱毒の蟲🦈
2025/8/18 22:01
(完)
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