「良かった、じゃあまた分からないことがあったら遠慮なく聞いてね}
林さんは「ちょっと休憩してくるね」と言って休憩室に行った。
嬉しかった。
誰かに助けて貰えたことが、
誰かに親切にして貰えたことが。
何より嬉しかったのだ。
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定時前に俺はいつも帰る。
でも今日は違った。
「星くん、今日1杯飲みに行かないかい?」
林さんから、お酒を飲まないかと誘われたのだ。
俺は嬉しくなって、「行かせていただきます」
と即答した。
「ここが俺の行きつけのお店だよ」
「めちゃ高そうな、お店ですね」
連れてこられたのはいかにも金持ちな人がいきそうなお店だった。
「好きなのを頼んでいいよ、俺の奢りだから」
メニュー表を恐る恐る開いてみれば、
「ぜ、0がひとつ多い、」
そう、いつもコンビニ弁当で済ませている星からしてみれば驚くのも無理は無い。
林さんは相当お酒が好きなのか星がメニュー表を眺めて百面相をしている間にもうお酒を飲んでいた。
星が頼んだ頼んだ料理が来た時にはもう既に6杯目の角ハイボールに手をつけ始めていた。
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「ほしぃ〜もっとのめよお〜〜」
「は、林さん大丈夫ですか、」
ベロンベロンに酔っ払っていた。
俺は林さんの住んでる家なんか知らないしどうしようかと悩んでいた時、いつの間にかあの神社の前に来ていた。
「おぉ?神社かぁ??いいねえ、ほし、肝試しするぞ!!」
突然元気になった林さんはフラフラとした足取りで神社の中へ入っていく。
「林さんまってください!夜の神社は危ないですから!!」
「きけんぅ??なんだ星、ビビってんのかあ????」
林さんはケラケラと笑い、足を止める気配は無い。
その時だった。
【止まれ】
頭の中に突然声が聞こえてきて、星は反射的に足を止めてしまった。
それに一歩遅れて聞こえてきたのは、何かがずり落ちていく音と林さんの悲鳴だった。
「林さん!?林さん!?!?」
林さんは足を滑らせて崖から滑り落ちたのだ。
「き、救急車、呼ばなきゃ、!!」
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林さんは死んだ。
即死だった。
体がぐちゃぐちゃだった。
体の一部がなかった。
頭がなかった。
「じゃあ、星さんと林さんは一緒に歩いてて、林さんだけ落ちた、と」
「はい、」
「嘘だろ?」
「え?」
星は驚いて下を向けていた顔を上げた。
「本当は君が後ろから押したんじゃないのか!?」
「違う!俺はそんなことしてない!!尊敬する人をこの手で殺すわけが無い!!」
「でも彼の背中には誰かに押されて落ちたような形跡があった!!」
「そんな、、、」
誰かに止まれと言われたから反射的に止まったら彼だけ落ちました。なんて言えるはずもなく、星は黙り込んでしまった。
押した?俺が??なんで?
俺が殺した?どうして?
「君、署まで来てもらおうか」
「お断りします!!!!」
星は警察の静止を振り切って逃げた。
目的も決めずにさまよって着いた先はあのいつもの神社。
自分の世界は変わってしまったけど、この神社だけは変わらなかった。
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