🦈蠱毒の蟲🦈

2025/10/11 09:44

「世界で1番血が濃い男の話」

彼の記憶にあるのは少女と暮らしてた日が始まりだった

男はひとりで雪山を歩いている時に、生贄の子を発見して保護した

生贄の子は初めは警戒していたものの、数年も経てば親子のように、男が歩けば後ろを楽しそうに着いてくるような子に育った

男は生贄の子がなぜあんな所にいたのか、生贄とはなんなのか、尋ねた

「ずっと雪が止まないの。だから、雪に住んでる怪物が怒っちゃったからなんだって」

男は答えた
「俺はずっとここにいるけど、そんな怪物に出会ったことは無いなぁ、」

「そうなの？じゃあ、なんで雪が止まないのかな、」

「雪が止んでくれた方がいいのかい？」

「うん、そしたら私が価値ある人間だったって証拠になるでしょ？」

「…」

曇りない瞳で見つめられた男は大層困った

もちろん雪が止むことはなかった

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ある日のこと、薬草を取りに来て崖から落ちた人間を見つけた

そいつはどうやら旅人のようで、そいつが言うには「愛犬が病気」との事だ。
だから犬にも効く薬草を探しに来たのだが、雪の下が空洞になっていることに気が付かず落ちてしまったらしい

「お客さん…？」

「あっ、初めまして。××といいます。……こちらは娘さんですか？」

「いや、俺は拾っt((「はい！娘です！」??」

「いやだから、違((「娘さんなんですね！お美しい……!!」俺の話…」

そこからなんやかんや旅人の冒険団にハマったのか楽しそうに談笑する若者たちの邪魔にならないようにそそくさと移動した男。

その間に男は例の薬草を取りに行った

予想していたよりも容易く手に入ったからか時間があまり、人間用の薬草もとることにした

男が帰ってきた時には既に談笑を終えており、2人と、旅人の愛犬が出迎えてくれた

「こっちが、お前の犬用の薬草だ。飲ませ方は知らない。それと、こっちにあるのは人間用……まぁ、使い方は"俺の娘"にでも聞くといい」

「！！」
「こんなにいっぱい…！ありがとうございますっ！！」

旅人は籠に沢山入った薬草を受け取ると愛犬の頭を撫でた

だが、

「ｸﾞﾙﾙﾙﾙ」
「ﾊｧ､………やっぱりか」

犬にめっちゃ唸られた
唸るというより敵意剥き出しなのだが

「こ、こら！恩人さんに向かって……」
「気にするな、いつもの事なんだ」

男は山の中で出会う動物たちによく敵意を向けられていた
本人は敵意を向けたことも圧をかけたこともなかった

旅人はものすごく申し訳なさそうに
娘はいつもの事だよね〜と言いながら犬の頭を撫でていた。おい、いつ仲良くなったんだ

「お父さんが居なくなってからすぐだよね〜」

お腹をわしゃわしゃ撫でられてべろを出しながら喜ぶ犬。デレデレするな俺の娘だぞ。俺に対する敵意はなんだ。

その後も旅人はよく遊びに来るようになった
娘とも仲良くしてくれてありがたい限りだ。

そして2人が少し外へ遊びに行ったその日

人間が来た

「ここにいらっしゃったのですね」

「誰だ」

「○○です。お久しぶりですね。」

「知らんな」

「左様ですか……。きっと記憶が無いのですね。無理もありません、産まれる前に貴方様は捨てられたのですから」

「そんなことはどうでもいい。俺が生まれて俺が育ったのはここだ。つまり俺の帰る場所もここだ。」

「……帰る気はないと？」

「記憶にすら残ってない家になぜ帰る必要がある？」
次第に苛立ちを隠せなくなってきた男は吐き捨てるように言葉を紡いだ

「国がもう滅びます」

「国とは滅ぶものだ」

「あなたの国です」

「俺の国はここだ」

「ええ。ですがあの国はあなたの国なのです。そして、そこを滅ぼさんとする人間たちがあなたを殺しにここに来ます」

「は？」

「彼らは来ますよここに」

男は素早くナイフを抜き人間を押し倒して首に押し当てた

「お 前 も そ の 一 人 で は な い の か ？」

「あぁ、素晴らしい、素晴らしい！その瞬発力。やはり血は闘えませんね。」

人間は大層恍惚とした表情で男を見た
まるで、自分に殺されるのが嬉しいかのように

「…いつ来るんだ」
「信頼してくれるんですか？」

「今ので理解した。お前が産まれたばかりの俺をここに置いたんだろう？」

「覚えて…おいでですか、？」

「知らねぇ。だが何となくわかる」

「そうですか」

人間は乱れた服を正して来客用の椅子に座った。
作法が綺麗だった。そういう家育ちか？

「明日の朝です。夜明けと共に来るでしょう」

「そうか、なら逃がさねぇとな」
「？」

ガチャリ

「お父さんただいまぁー！」
「ただいま戻りました…あれ、お客さんいらっしゃったんですね」

「戻ったかお前ら。ではここから出ていくといい」

「え、？」
「な、なぜですか！？僕たち何か粗相を……！？」

表情を変えずに言う男
慌てる2人
2人を交互に見て「なるほど」と理解した人間

「……今夜、化け物が出るんだ」
「!!ほ、本当に、？」
「あぁ、だから……旅人、お前が俺の娘を連れてこの山を降りろ。そして遠く……ここから1番遠いところで暮らせ」

「それは、なぜですか、あなたはどうす((「お前たちが化け物に顔を覚えられたからそう言っているんだ」……」

「……わかったよ、お父さん。」
「分かりました……でも必ず会いに来てくださいよ」

「善処しよう」

そして旅人は娘を連れて山をおりた

「良かったのですか？」
「何がだ」
「出来もしない約束をしたことですよ。あれは後に呪いになりますよ」
「どう捉えるかはあいつら次第だ。それに、あいつらはそんなに弱くない」

男は立ち上がると人間に向き直った
「さて、俺はどうしたらいい」

「そうですねぇ…………"一点突破"なんてどうでしょう？」
「おもしろい。のった」

男と人間はまだ周りが暗い夜明け前に「アノ国」へついた

「これは……」
「どうですか、記憶中枢が刺激されませんか？」
「…………」
「？」

「俺の国、俺を裏切った国、……た だ い ま」
「……ふふ、そうですね、あなたを裏切った国ですよ」

「反逆するものは殺せ。俺が許した」
「仰せのままに」

男が命令を下すと、大変嬉しそうに聞き入れた人間は即座に姿を消した
城門裏からたくさんの悲鳴と血が飛び散る音が聞こえる

「俺が帰ってきたんだ。…………なにをしている？」
男がそう言うと、何もしていないのに扉が全て開いた
防御塀も何もかもが機能しなくなった

「この城は俺たちの血で出来ている。俺の血（力）で好きなようにできるのは当たり前だろう？」

男は何から何まで粛清した。
そしてあの人間も傷一つなく、男に逆らう全てを粛清した

「俺の国だ。」

男は逆らう者がたとえ他人だろうが身内だろうが関係なかった

「これで綺麗になった」

「ええ、ほんとうに、」

でもまだ仕上げが残っている

「次の王の後継者は決まったか？」

「はい。」

「そうか」

男は安心したように目を伏せると一言告げた

「ではその王に俺を吊らせよ」

目を覚ました時、男は断頭台にいた

「この王は数多の罪のない人間を大量虐殺した」
「死刑だ！」
「死刑！死刑！」
「断罪！断罪！」

「なにか言い残すことはあるか」

「そうだな…………」
「ここは、俺の国だ」












ｺﾞﾄﾘ

「死んだ……？」
「死んだのか……？」

「ﾋｨｯ、動いた、動いたぞ！？」
「まだ生きてる！殺せ！殺せ！！！」

首を落とされた男は頭を失ってもなお動き続けた
といっても、死んではいたのだ
死んではいたが、まだ脈打っていた
それを村人たちは"動いた"と勘違いした

「来世もお供させていただきますよ、ｰｰ様」

世界で1番血が濃い男

理由は簡単
身内が子供を作り、その子供がその身内と子供を作り、さらにまたその子供が親、もしくは子、兄弟と子を作る

そして濃く濃く、異型になって育つ血。
男は最後の血筋だった

近い血筋で作られた子供はどんどん異型になっていく

男が犬や動物に敵意をむき出しにされたのはそういうこと

人間たちは無意識のうちに視界に映る奇妙なものに補正をかける
だから男は「人のように」としか映らなかった
もちろん人間以外の動物たちからすれば「ただの化け物」として映る

➡この説はインシェンティと同類

人間……執事は男を山に捨てた張本人であり、生まれた時から化け物だった男を尊敬してた（こいつも血が濃い➡男との血の繋がりはなく、執事は執事で濃い血を持つ）

そして今世は、彼は首が落ちても死なないからだになる（首や指が切れても痛くなければ死ぬこともない）
体に穴が空いても死ぬことは無いが、再生は遅い

死ぬ事が出来ない
人の形はしてるが、壊されまくると化けの皮が剥がれる

今世も執事いるお

男

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