天上天下唯我独身
2025/10/29 23:29「……なあ、兄貴。大丈夫か?」
善逸は声を絞り出すように言った。
獪岳は団子の串を指先で弄びながら、まるで他人事みたいな音を鳴らした。
「は? 何が?」
「だって……あの子、昨日の任務で……」
「ああ、あいつね。死んだんだろ。」
軽い。
まるで、虫でも踏んだみたいな声だった。
善逸の胸が、ぐっと痛んだ。
「……悲しくないのかよ。」
「悲しい?」
獪岳は笑った。
乾いた音が、夜風に混じる。
「お前バカじゃねぇの?
女なんて、どうせすぐ死ぬだろ。
力もねぇくせに隊員やって、勝手にやられて。
そんなの、最初からわかってた。」
善逸は言葉を失った。
「じゃあ、なんで付き合ったんだよ。」
「はぁ? お前マジでウブだな。
俺だって男だぞ? ……一回くらい、経験しときてぇだろ。」
あまりにも平然と。
まるでそれが、人として普通のことのように。
沈黙。
虫の音さえ止んだ気がした。
善逸は拳を握りしめた。
怒りでも悲しみでもなく、
ただ——絶望だった。
この人は、もう何も感じないんだ。
誰かの死も、自分の痛みも、
全部どうでもいいと思ってるんだ。
「……兄貴。アンタさ……」
言いかけて、やめた。
何を言っても、届かない気がした。
獪岳は立ち上がる。
月明かりに照らされた横顔は、妙に静かで、
その無表情こそが、彼の本音に見えた。
「泣いても意味ねぇだろ。
あいつも俺も、どうせみんな死ぬんだ。」
獪岳が団子を食いながら席を立つ。
その背を見送りながら、
善逸は、まるで雷に打たれたみたいに立ち尽くしていた。
てんさい
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