【特集】ゆとりの党ができるまで

「よってこの憲法改正案を可決する！」

皇歴60年、第三次憲法改正により、下院である臣民院の立候補に、皇帝承認が不要に。

その後に行われた臣民院総選挙では、

「臣民党、大敗の情勢です。パカピニオン共産党、連合労働党が合わせて全体の過半数を上回り、史上初めて臣民院での第一党交代が起こる見通しです。」

王室の力を借り、臣民院を握る術さえも奪われた臣民党。共産党73議席に対し、臣民党はわずか24議席。

もはや崩壊を待つのみの状況で、臣民党はある賭けに走ります。

「えー、臣民党と、共産党の合流というものを、早期に実現し、党のいざこざを超えた政策実現というものを、行ってまいりたい。という次第です。」

そう語ったのは、臣民党代表のマウェハラー・セージ氏

これに対し、共産党のレンポー幹事長は、

「われわれの掲げる政策に、一定の賛同が得られるのであれば、前向きに検討していきたいと思っております。党勢拡大のチャンスととらえ、会談してまいります。」

と、積極的な姿勢。

臣民党と共産党の全面的な合流が実現すれば、合流新党は人民院で106、臣民院で97議席をもつ巨大大政党に。

そんな異例な調整が続く中、ある人物は、

「わたくしとしましては、合流はありえないと思っております。そもそも全く異なるルーツ、政策、支持層を持つわけですから。あまりにも浅はかな計画と言わざるを得ません。合流はしません。」

こう断言したのは、共産党書記長及び連合首相の、遷恒ゆとり氏。

書記長の却下により、あっさりと話は終わる。そんなはずもなく。

臣民党新人議員「互いに捨て身の覚悟で取り組んでいるのに。全く誠意がない対応だ。」
共産党ベテラン議員「党員たちの努力が水の泡になってしまう。ゆとり氏には書記長の座を退いてもらう他ない。」
と、痛烈な批判。

それでも一向に受け入れないゆとり氏、そして事は起きる。

レンポー氏「先程、共産党員58人と、臣民党が合同で、首相に対して不信任案を提出いたしました。」

なんと、共産党からの“造反”

これによりゆとり政権は退陣。そして。

「わたくし、遷恒ゆとりは、共産党を離党いたします。こんな状態の党内をおさめ、政界を先導していくことは、もはやできなくなってしまった。非常に残念です。」

なんと書記長が離党する結果に。

ことは続く。

「ゆとりなき共産党、イデオロギーなき共産党には、もはやエゴしか残っていない。」
「失望、それ以外に述べる言葉がない。臣民党との合流などなにがあろうと飲まない。」

こうしてゆとり派議員が次々と離党。
その数、43人。

政界は分断された。

その後、合流に向けた会談において、

マウェハラー氏「新党としての合流を計画しておりましたが、共産党さんから提示されたのは、まあ吸収合併。我々にとっては望ましくない。」

一方、書記長に就任したレンポー氏
「共産党としての全面合流。これ以外考えておりません。理念も引き継ぐつもりです。」
とまたもや亀裂。

結果、新たな理念は合流後に作成し、共産党として臣民党が合流する形で結党。

政界をまとめ上げるための合流は、かえってあらたな亀裂を生むことに。

合流後に行われた書記長選挙では、
レンポー氏「これまで以上に、グレードアップした、人民のための政治を貫いていきます。」
マウェハラー氏「新しい党として、新しい連合をつくりあげる。」

結果は大差でレンポー氏が勝利。
首相に就任した。

合流共産党は、過半数は維持したものの、集団離党により、期待したほどの効果は得られなかった。

むしろ、乱暴なまでの合流に対し国民は激怒。合流直後の共産党の政党支持率はわずか12%

しかしながら第ニ党である連合労働党は共産党の傀儡政党。第三党の新党革命も共産党との連立協議の途中と、絶望的な状況であった。

そんな中、彼が再び動き出す。

「ゆとりの党を、設立いたします。」

遷恒ゆとり氏が、共産党を離党した議員らとともに、新党設立を宣言。

これに対し、期待すると答えた国民の割合は72%。共産党とは比にならないほどの注目を浴びていた。

合流すれば支持層は足し合わされ、安定した政権運営ができると考えていた共産党は、絶望的であった。わずか1ヶ月後に人民院総選挙を控えている。考えた末、共産党はあるまじき暴挙に走る。

「ゆとりの党は、反社会的勢力なのだ。断じて政党として認めるべきではない！」

共産党は、ゆとりの党そのものの存在を認めないという見解を表明。これに後押しされたかのように連合司法府は、ゆとりの党の政党承認を却下する。

絶たれたと思われたゆとりの党のルート。しかし終わらなかった。

「無所属でいいんです。100の小選挙区すべてに、候補者を擁立します。」

比例区に出馬できないなら、小選挙区1本で戦えばいい。そんな破天荒な選挙戦の結果は、

ゆとりの党の圧勝に終わった。比例区なしで全体の半数議席を確保。一瞬にしてゆとりの党は第一党に舞い上がった。

そして、
「遷恒ゆとりくんを、首相に指名する。」

わずか一年ばかりで首相に再登板。こうしてゆとりの党は承認され、確固たる地盤を築いた。

コメントを入力…