時代設定が近代の、専門では無いけど趣味の1つとして建築も好きなリアンと詳しいことはよく分からないので取り敢えず協力してあげたい椿の話。ある日の夕方、二人で散歩してる時に、普段行かない夜の街の構造を見たいというリアンに付き合う椿。一番奥の行き止まりに三階建ての一際大きな店があり、二階の華美で荘厳な日本建築の設計が目に入り「日本建築は素朴な物にこそ良さがあると思っていたが、あれは洗練された芸術のようなものを感じる。もっと近くで見てみたいが...椿は嫌だろう?」と恐る恐るリアンが尋ねると椿はくすくす笑って「建築がお好きなんでしょう?二階なら構いませんよ。ただ、彼処が何の店か分かってます?」と聞き返すと、「...?女が酒を注ぐ居酒屋か料亭の類かと思ったが...。」と予想を呟き、微笑む椿を答えを催促するように見る。椿は「此処は遊郭と呼ばれる娼館ですよ。三階に、此方では遊女と言う娼婦が居て、二階は連れ込み宿になっているようですね。二つ一緒に営業するのは珍しいです。」とリアンに教える。リアンは途端にくるりと元来た道の方へ身を翻して「すまなかった。椿が許可しようとそうまでして行きたくはないからもう良い。...所で、連れ込み宿とは何だ?」と単純に気になった事を聞く。椿は気にしてませんよと笑った後、「連れ込み宿って言うのは、リアンさんの所でのfashion hotel、ですね。ほら、恋仲の男女もよく来てるみたいですよ。」と腕を組んだ若い男女を指さす。椿はそう聞いて少し身じろぐリアンと繋いだ手を更に強く握って「だから言ったでしょう?二階なら、良いんですよ。」と、先程までとは違い扇情的な笑みを浮かべる。リアンは生唾を飲み込み、「...良いんだな?」と念を押すが「あんまり焦らしちゃ嫌ですよ。」とだけ答え、二人は朝まで出てくることは無かった。
